オリジナル小説、日常生活についてなど。
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「じゃあね、ユキ」
「ばいばーい」 にこやかに友人に手を振る私は、いつから偽りなのだろう。 今ではそんな疑問すら、愚問だ。 中学から女子校育ちの私は女の嫌な部分を腐るほど見てきた。 女の修羅場は恐い。 女の本気は恐い。 女の素顔は恐い。
女の裏は恐い。
女子校で学んだことは、これくらいだ。 イジメなんて日常茶飯事。 慣れっていうのはスゴイもので、もうみんな、 少々の嫌がらせでは動じなくなった。 誰かの彼氏を誰かが奪っただの、奪い返しただの、 くだらない恋愛話に幸せで甘い話など、ひとつもない。 にこにこした愛らしい笑顔の裏で、 何を感じ、何を考えているのか、みんな予測不可能だ。 「ただいま」 「おかえり」 「あ、いたの?」 「あら、いちゃ悪い?」 「別に」 キャリアウーマンな母との会話といえばこの程度。 コミュニケーションなんて、何年とっていないだろう。 それでも、母のことは嫌いでなかった。 嫌いになる理由がなかったし、 自分のために働く母を嫌うことはできなかった。 「ご飯、作るけど食べて行く?」 「すぐに出るからいらないわ。 あ、なんならおにぎり作ってちょうだい。梅干し入りね」
仕事の資料を一時的に取りに来ただけらしく、 希望どおりに作った梅干しのおにぎりを持って、 母は慌ただしく家を出て行った。 これからも毎日、同じように時間は過ぎるのだと思った。 毎日が仮面舞踏会の学校で適当に勉強して、 母のいない食卓を1人で囲む。 それならいっそ、終わってしまって構わなかった。 そう、確かにこの時まで、私はそう思っていたのだ。 終ってしまえばいいと思っていたのだ。
今日も。
未来も。 世界も。 宇宙も。 人生も。 死にたいわけじゃないし、大した悲しみを味わったこともない。
それでも、感じる虚無感。
どうしてだろう。
いつだって、寂しい心の理由を、私は知らなかった。
部屋に戻ると、窓が開きっぱなしになっていた。
さっき着替えに戻ったときは、閉まっていたはずなのに、おかしい。
ひらりと揺れる、お気に入りのチェック柄のカーテン。
小さく吹く、心地よい夏風。
ムシムシとした部屋に冷房をつけて、パタンと閉めた窓。
振り返ると、白い服を身にまとった同い年ぐらいの男の子が、
私の目の前に立っていた。 ああ、きっと幻覚なんだと思って一度目を閉じて、もう一度ゆっくり開いても、
ひらりと舞った白い羽が、より一層輝いて見えるだけだった。
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